(2008年5月2日、東京=S&P)スタンダード&プアーズは本日、「インダストリー・アップデート:日本の証券業界 2008年1-3月期決算」と題するリポートを発表した。格付け先の大手証券3社(大和証券グループ本社「BBB+/安定的/A-2」、日興シティホールディングス*「A+/ポジティブ/A-1」、野村ホールディングス「A-/安定的/A-2」)の2008年1-3月期(第4四半期)決算は、野村・大和両グループで最終赤字を計上、日興でもリテールの日興コーディアル証券が赤字に陥るなど厳しい内容となった。米サブプライムローン問題に端を発する世界的な金融市場の混乱のあおりを受けた。通期ベースでも全グループで減収減益となり、野村はサブプライム関連等の損失や費用が響き、大幅な最終赤字を計上した。
金融市場の混乱の影響は海外の金融機関との比較では小さかったものの、3グループは引き続き直接・間接的に業績に打撃を受けた。野村ではモノライン(金融保証会社)のエクスポージャーに大幅な引き当てを実施したほか、大和でもクレジット関連や裁定取引の評価損の計上によりトレーディング関連損失が膨らんだ。3グループとも基本的に自己勘定によるトレーディングは限定的で、仕組み債など顧客フローベースの取引で発生するポジションについては大部分ヘッジしているため、トレーディングリスクは限定的である。しかし、同四半期にはヘッジの一環として手当てしたモノラインのプロテクションの有効性が、当該モノラインの信用力の低下により著しく低下したり、急速な円高や、債券市場において現物と先物で理論価格とかけ離れた水準が続くなど想定外の事態が発生し、損失が拡大した。
また、サブプライム問題の余波で株式市場が低迷したことを受け、第4四半期に期末要因でビジネスが拡大する傾向にある投資銀行関連業務も低調だった。個人の株式売買が細ったことや、投資信託の販売が減少したことから、リテールも各グループで減収減益となった。アセットマネジメントでも、投信の販売が不振だったことに加え、株価下落に伴い運用資産残高が減少したのに伴い、委託報酬は減少した。マーチャントバンキングでも目立ったエグジット(出口案件)はなかった。
今回の世界的な市場の混乱は歴史的にみても深刻な金融危機であるといえるが、スタンダード&プアーズでは、程度の差はあれ、このようなサイクルは繰り返すと考える。証券会社の収益は事業特性上、市況変動の影響を受けやすく、金融市場が混乱した場合、証券の流動性の大幅な低下やヘッジの有効性の低下などにより想定を大幅に超える市場リスクにさらされる可能性があり、このことは信用力上のマイナス要因として各社の格付けに織り込まれている。また、各グループは国際比較でも潤沢な資本を維持しているため、今回の混乱に伴う信用力の低下は限定的と考える。ただし、国内証券市場の低迷が長引いたり、国際金融市場の一層の混乱により、トレーディングポジションの損失が大幅に拡大した場合は、格付けにマイナスの影響が及ぶ可能性がある。
* 日興コーディアルグループは5月1日付でシティグループ・ジャパン・ホールディングスと合併、日興シティホールディングスが発足。
*文中のカウンターパーティ格付けは「長期/アウトルック/短期」で表示。各グループの子会社の格付けはリポート本文あるいは日本語ウェブサイト(格付けリスト、www.standardandpoors.co.jp)でご覧になれます。
* リポート「インダストリー・アップデート:日本の証券業界 2008年1-3月期決算」の全文はS&Pの日本語情報サービス商品に本日、掲載されます。情報商品の詳細は営業・クライアントサービス(電話03-4550-8711、Eメール:sales_japan@standardandpoors.com)まで。
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