| 新規格付け |
| AA- |
長期発行体格付け |
| アウトルック:ポジティブ |
スタンダード&プアーズは4日、横浜市に対し、新たに上記の発行体格付けを付与した。スタンダード&プアーズが日本で初めて付与した自治体格付けとなる。横浜市の格付けには、1)市の強い自主財源基盤と歳入の高い安定性、2)財政健全化へ向けた市長のリーダーシップと堅実な財政運営、3)中央政府によるシステムサポート(制度的支援)--を反映している。
横浜市は多様な産業基盤を持つうえ、住民の所得水準が比較的高く、政令指定都市のなかでも自主財源の基盤が比較的強固である。中田宏市長のリーダーシップの下、日本の自治体としてはかなり優れた財政規律が維持されていると考えられる。政令指定都市の特徴として特別会計・公営企業会計の規模が大きく、それらの債務がすべて市の直接債務であるため、債務水準は高い。国からの移転支出の伸びが見込めない一方、高齢化の進行や制度的な制約により経常経費を抑制しにくいため、財政の柔軟性は低下しつつある。しかし、投資的活動前収支に対する歳入の比率が30%前後に保たれていることから、予期せぬ歳入の落ち込みに対応するのに十分な柔軟性が保たれよう。債務残高の対歳入比は普通会計で180%、全会計(推定)で200%後半に達するが、債務削減努力の効果が出はじめていることから、今後、改善に向かうと考えられる。地方分権の進展や制度変更などに伴い、システム・サポートが弱まる可能性があるが、横浜市の耐久力は比較的高いと評価している。
長期格付けのアウトルックは「ポジティブ」である。市税収入が増加に転じ、今後も伸びると考えられること、債務残高が減少しはじめたこと、次期中期計画で引き続き財政健全化が図られる見込みであることなどから、債務返済能力は向上すると考えられる。債務水準が国際比較でみて非常に高いため、中田市長の強力なリーダーシップによって実効的な債務削減が進むことが前提である。市税収入の増加や債務負担の削減が何らかの理由で滞った場合、あるいは地方財政制度が今後急激に変化し、財源の裏付けなしに大きな行政責任が移転される場合には、横浜市の格付けに下方圧力がかかる。自治体への十分な財源移譲が伴う地方分権は、横浜市のように、財政規律が優れている自治体の信用力にはプラスに働く。格付けには中央政府による支援を一定程度織り込んでいるため、日本のソブリン格付け(AA-/ポジティブ/A-1+)の影響も受ける。ただし、ソブリン格付けとの直接の連動性はない。
スタンダード&プアーズは米国以外でも35カ国で計244もの地方自治体に格付けを付与しているが、日本の自治体から依頼を受けて格付けを付与するのは、今回の横浜市が初めてのことである。