|
|
大阪市に「AA-/A-1+」の自治体格付けを付与
|
| 掲載日: Aug 15, 2007 23:00 JST |
| アナリスト: 柿本与子、東京 電話03-4550-8705 |
|
|
|
| 新規格付け |
| AA- |
長期発行体格付け |
| A-1+ |
短期発行体格付け |
アウトルック:安定的 |
スタンダード&プアーズは本日、大阪市に対し、長期発行体格付け「ダブルAマイナス」と短期発行体格付け「A-1プラス」を新たに付与した。格付けには、1)市の安定した自主財源基盤と今後の税収回復見通し、2)堅実な財政運営の実績と今後の財政規律維持の見通し、3)中央政府によるシステムサポート(制度的支援)--を反映している。
大阪市は多様性のある産業基盤を持ち、西日本最大の経済地域の中核を成す。政令指定都市のなかでも自主財源基盤が比較的強固である。在勤者に占める周辺都市住民の割合が比較的高く、個人所得の一部が流出していることなどを背景に、住民の所得水準は市内の経済活動に照らしてやや見劣りする一方、インフラ基盤の整備状況は高水準で活発な経済活動に見合っている。政令指定都市の特徴として特別会計・公営企業会計の規模が大きく、それらの債務はすべて市の直接債務であるため、債務水準は高い。債務残高の対歳入比は、税収回復による歳入増により、今後、改善に向かうとみられるが、現状は普通会計で約200%、全会計(推定)で300%近くに達する。1990年代に景気浮揚政策の一環として積極的な公共投資を行った際の負担が重く、外郭団体・事業の整理に伴う市の負担も顕在化しつつある一方、地下鉄事業をはじめとする公営企業の採算性は他の国内自治体に比べて良好である。総合すると債務負担は政令市のなかでは平均的と言えるが、国際比較では非常に重い。
大阪市の行財政改革は、關(せき)淳一市長のリーダーシップのもとで2006年から本格化した。始動はやや遅いものの、情報公開の充実度が全国でトップレベルに達しているほか、財政面でも成果がすでに表れてきている。スタンダード&プアーズではこうした改革努力が継続されることを想定するとともに、阿倍野など再開発事業の負債処理や外郭団体の整理などに伴い今後発生するとみられる一時的な支出を、一般会計の負担として格付け分析に織り込んでいる。国からの移転支出の伸びが見込めない一方、経常的な行政サービス活動(=投資的活動を除いたベース)の歳入に対する同収支の比率は20%前後と、国際比較では良好な水準にあり、投資的経費の負担を加味したベースの収支もプラスに転じている。高齢化の進行や制度的な制約により経常経費を抑制しにくいため、今後、財政の柔軟性への圧力が高まると考えられるが、投資抑制や外郭団体・事業の整理、徴税率向上などの改革努力に加えて税収の回復が続けば、一定の柔軟性を確保できるとみている。また地方分権の進展や地方財政制度の変更などに伴い、システムサポートが弱まる可能性があるが、大阪市の耐久力は比較的高いと評価している。
長期格付けのアウトルックは「安定的」である。市税収入が増加に転じており、今後も伸びると考えられること、本格的な財政緊縮の効果が表れはじめたことから、経常経費の負担増や、大阪ワールドトレードセンタービルディングやアジア太平洋トレードセンターといった外郭団体・事業の整理などに伴う追加負担が顕在化した場合も、債務返済能力を維持できると考えている。ただし、債務水準が国際比較でみて非常に高いことを踏まえると、現市長および次期市長の強力なリーダーシップによって実効的な債務削減が進むこと、また次期中期計画でも強力な財政健全化が図られることが前提となる。市長選後などに改革スケジュールが滞るようであれば、アウトルックの下方修正を検討する。また、地方財政制度が今後、急激に変化し、財源の裏付けなしに大きな行政責任が移転される場合にも、大阪市の格付けに下方圧力がかかる。大阪市の税源はその行政責任に比較して十分とは言えないため、それらが大幅に是正されるような規模の財源移譲を伴う形で地方分権が進められる場合には、大阪市の信用力にプラスに働く。格付けには中央政府による支援を一定程度織り込んでいるため、日本のソブリン格付け(AA/安定的/A-1+)にも影響を受ける。ただし、ソブリン格付けとの直接の連動性はない。
*文中の格付けは「長期/長期格付けのアウトルック/短期」で表示。 |
|
|
|
|
|
|