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モノライン信用力低下と米サブプライム問題が日本の金融機関に与える影響

掲載日:    Feb 04, 2008 00:00 JST
アナリスト: 根本直子、東京 電話03-4550-8720 吉澤亮二、東京 電話03-4550-8453
黒木達雄、東京 電話03-4550-8329 田中玲奈、東京 電話03-4550-8587
吉田百合、東京 電話03-4550-8581

スタンダード&プアーズは金融保証会社(モノライン)各社の格付けを、サブプライム関連損失の状況や資本政策などを踏まえて見直した結果、1月31日付で米フィナンシャル・ギャランティー・インシュアランスを「ダブルA」に格下げし、方向性不確定で「クレジット・ウォッチ(CW)」に指定するとともに、米MBIAの格付け「トリプルA」を引き下げ方向でCWに指定した。

スタンダード&プアーズでは、モノライン各社の信用力が仮にさらに低下したとしても、これまでに想定される範囲においては、日本の金融機関に与える直接の影響は全体として限定的にとどまるとみている。個別に損失が発生する場合でも、各金融機関の格付けに影響する規模にはならないと現時点では想定している。ただし、米国住宅市場の悪化が長期化すれば、サブプライム関連の資産を持つ金融機関にとって、管理可能ながらもネガティブな要因となる。またモノラインの格下げによって金融市場が不安定となり、株式市況や実体経済に深刻な影響が及ぶ場合には、アウトルックや格付けの見直しが必要となる可能性も否定できないことから、今後の動向を引き続き注視する。

銀行
モノラインの信用力低下による銀行への影響としては主に以下の2つがある。第一に、モノラインによる保証付金融商品を銀行が保有しており、その市場価値が低下して、評価損や実現損が発生するケースである。大手銀行6グループ(*1)の2007年度第3四半期決算の発表内容によれば、モノライン関連投融資残高は合算ベースで約7,000億円、規制自己資本の2%程度と限定的である。実現損はまだ生じていない。モノライン関連投融資の価格下落リスクは、裏付け資産の質やモノラインの信用力水準などからみて、サブプライム関連資産に比べて低いと思われる。ただし、投資委託先のファンドなどがこうした投融資を保有している可能性もあることなどから、現時点で全体の金額がどの程度正確に把握されているのかは不明である。

第二に、投融資のリスク・ヘッジとして、各行がCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)契約などにもとづき、モノラインからプロテクションを購入している場合、モノラインの信用力の低下によって引き当てなどのコストが生じることがある。特に参照債務の価値が毀損している場合、モノラインの信用リスクの影響度合いが大きくなる。大手行のうち、第3四半期決算でモノラインを引受先とするプロテクションについて引き当てを実施したのは2行であった。みずほフィナンシャルグループでは、「ダブルB格」以下の先をスワップ・カウンターパーティとする契約元本1,600億円<サブプライム関連エクスポージャーを裏付け資産に含むCDO(債務担保証券)700億円を含む>について、490億円を引き当てた。三井住友フィナンシャルグループは、ヘッジ先のモノラインに対するエクスポージャー200億円について、約100億円の引き当てを行った。参照債務の価格やカウンターパーティとなっているモノラインの信用力などの動向によっては、追加引き当てが必要となる可能性もあるが、信用力への影響は限定的にとどまろう。

モノラインの信用力低下の主因である米住宅市場悪化や景気後退懸念は、サブプライム関連資産の一段の下落を通じて、大手銀行の第3四半期業績の圧迫要因となった。ただし、現時点では各行のアウトルックや格付けの変更につながるほどの影響度ではない。各行のサブプライム関連資産にかかわるリスクは、潜在的な損失を含めて管理可能な範囲にあるとスタンダード&プアーズは考える。

大手6行グループは2007年度第3四半期までの9カ月間に合計で、サブプライム関連の処理損(引き当て処理を含む)を約4,700億円計上したが、コア業務純益が底堅く推移しているため、約1兆3,000億円の純利益を計上している。また2007年12月末のサブプライム関連のエクスポージャーは約7,000億円<現時点で各社が下期に大幅な減損の必要性を公表したRMBS(住宅ローン担保証券)、サブプライムローン以外の資産を裏付けとするCDO、SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)向け関連与信などの残高を含む>と、9月末の約9,300億円から減少した。同金額は2007年中間期末の規制自己資本額、総資産額のそれぞれ2.0%、0.1%、2006年度のコア業務純益(特殊要因を除く基礎的収益)の15%に抑えられている。ただ、今後の証券化商品市場の動向によっては、評価損(2007年12月末時点で約940億円)や減損対象資産の範囲がさらに拡大する可能性もあるため、引き続き注意が必要である。

消費者金融・事業金融
モノラインの格下げは、自社の証券化案件でモノラインから信用供与を受けている一部金融会社にとって、資金調達の選択肢が狭まることから、信用力上、ネガティブな要因となる。消費者金融、事業金融会社のなかには、証券化案件でモノラインの保証を活用して、高格付けの債券を発行している先がかなりある。モノラインの格付けが低下すると、今後組成される案件でスキームの変更などが必要になり、発行体にとって調達コストの上昇や資産効率の低下に結びつく可能性がある。またモノライン保険会社がリスク許容度を絞った場合、案件組成自体が難しくなることも想定される。ただ、いくつかの例外を除いて、モノライン保証を活用した証券化により調達した資金が各社の借入金総額に占める比率は10%未満と低いため、影響はさほど大きくはない。貸金業規制の変更に影響を受けるノンバンクにとっては、そもそも資産の質の低下によって証券化が以前に比べて難しくなっていることから、モノラインの信用力低下を契機として調達環境が大幅に変わるわけではない。

生保・損保
モノラインの信用力低下が保険会社へ与える影響としては、銀行と同様、モノラインによる保証付金融商品を保有しており、その市場価値が低下して評価損や実現損が発生するケースがありうる。大手の生命保険会社および損害保険会社にヒアリングを実施したところ、こうした金融商品の保有高は各社ともに少額であり、合算ベースで生命保険会社は自己資本の1%未満、損害保険会社は同3%未満にとどまる。

一部の損害保険会社は、大手モノラインが引き受けた保証リスクを再保険の形で引き受けている。しかし、再保険金の支払い義務が生じるのは対象債券がデフォルトした場合であり、モノラインの信用力低下を直接の要因に支払い負担が生じることはない。各社の再保険引き受け形態はそれぞれ異なるが、いずれも米国公共債が過半を占めており、サブプライム関連の保証残高も限定的である。現時点では、各社の格付けに大きな影響を及ぼすとはみていない。

(*1)三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、りそなホールディングス、住友信託銀行、中央三井トラスト・ホールディングス

 

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