| 新規格付け |
| AA | 長期発行体格付け |
| アウトルック:安定的 |
(2008年3月26日、東京=S&P)スタンダード&プアーズは本日、東京都に「ダブルA」の長期発行体格付けを付与した。都の格付けは、1)極めて強固な自主財源基盤と良好な税収見通しを持つ、2)国際的に見て債務負担が非常に重い日本の自治体のなかで、石原知事のもと財政健全化で実績をあげている、3)今後も財政規律を一層意識した財政運営が継続して行われる見通しである--ことを反映している。長期発行体格付けのアウトルックは「安定的」である。
東京都はG7(先進7カ国)クラスの国民経済に比肩しうる経済規模を持ち、日本の政治・経済をはじめあらゆる中枢機能が集積している。多様性のある産業基盤と担税力に富む人口を有し、日本の自治体のなかでは自主財源基盤が最も強固である。企業の本社が集中立地していることから、潤沢な法人関係税に恵まれ、都道府県のなかでは唯一、一貫して地方交付税の交付を受けない団体であり続ける。
景気低迷を主因に1990年代後半に財政が急速に悪化したが、1999年以降、石原慎太郎知事の強力なリーダーシップのもとで財政再建を強力に推進した結果、日本で最も財政状況が良好な自治体の1つとなった。行財政改革は広範な分野にわたり、いち早く発生主義会計に準じた公会計システムが導入された。開発事業や外郭団体の整理などは相当進んでおり、引き続き発生するとみられる一時的な支出は一般会計の負担として格付けに織り込んでいる。経常的な行政サービス活動(投資的活動を除いたベース)の歳入に対する同収支の比率は足元20%を超えており、歳入が景気の影響を相対的に受けやすいため、同比率は日本の自治体としてはボラタイルであるものの、総じて国際比較では良好な水準にある。投資的経費の負担を加味したベースの収支は2000年度以降、概ねプラスで推移しており、債務残高も全会計でみて2002年度から減少を続けている。
上下水道や地下鉄など都内のインフラは、活発な経済活動に見合う、高水準の整備が達成されているが、地下鉄事業をはじめ一部公営企業の採算は厳しく、これらの事業見通しは格付けに反映されている。東京都は一般的な政令指定都市の特徴も併せ持っており、特別会計・公営企業会計の規模が大きく、両会計の債務がすべて都の直接債務となるため、債務水準は高い。税収回復に伴う歳入増もあり、債務残高の歳入に対する比率は普通会計で約100%、全会計(推定)でも200%近くと、公募市場で資金調達を行っている日本の自治体のなかでは最も良好であるが、債務負担は国際比較では非常に重い。
一方、少子高齢化の進行や制度的な制約により経常経費を抑制しにくいこと、また都市部に特徴的な巨大インフラを維持・更新するための投資が一層必要になることなど、中長期的に財政の柔軟性を低下させる要因が見られる。地方交付税の不交付団体であるため、財源調整は基金を積むなど自ら行うほかないが、税収が現在の水準から急減して固定化されるようなことがなければ、一定の柔軟性を確保できるとスタンダード&プアーズではみている。都は2016年開催予定の夏季オリンピックの招致活動を行っているが、オリンピック関連経費は現時点では格付けに織り込んでいない。
アウトルックは「安定的」である。東京都では、1)税入が回復し、今後も安定した推移が見込まれる、2)堅実な財政運営により基金などバッファーの厚みが増した、3)債務残高がコントロールされている--ことに鑑みると、潤沢な法人関連税をはじめ都税収を支える現在の地方税の枠組みを根本的に揺るがすような制度変更が行われない限り、現状の債務返済能力を維持できると考えている。今後、地方財政制度や都区財政調整制度が大幅に変更され、都に財源の裏付けなしに大きな行政責任が課されたり、オリンピック招致が決まり、開催負担が現時点の想定を大幅に超えることとなった場合には、格付けに下方圧力がかかる。一方、東京都への財源移譲を伴う形で地方分権が進められる場合には、信用力にプラスに働く。
都の格付けは、日本のソブリン格付け(AA/安定的/A-1+)の影響も受ける。都は地方財政制度による財源配分や財源保障を受けていないが、地方財政制度における将来的な変更が都の格付けに影響を及ぼす可能性があるためである。ただし、ソブリン格付けとの直接の連動性はない。
*文中の発行体格付けは「長期/アウトルック/短期」で表示。
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