(2009年9月18日、東京=S&P)スタンダード&プアーズは9月17日(ニューヨーク時間)、企業銘柄を裏付けとする債務担保証券(CDO)に対して、グローバルに適用する格付けの手法と想定を更新したことを発表した。
9月17日に発表した英文リポート「Update To Global Methodologies And Assumptions For Corporate Cash Flow And Synthetic CDOs」では、CDOの格付け規準の大幅な再計測を解説している。今回の格付け規準の更新により、CDOと他のセクターの格付けについて、セクター間の格付けの比較可能性が向上すると考えられる。
今回の格付け規準更新は、2009年3月16日に公表した意見募集で述べた提案の最終結果である。市場参加者からは40を超える意見書が寄せられたほか、その他の市場参加者にも直接コンタクトを取ってフィードバックをいただいた。
サンプル・テストに基づくと、今回の格付け規準の更新でコーポレートCDOの多数のトランシェが格下げとなる可能性が高い。今回の格付け規準更新に伴い、全世界でコーポレートCDO案件のおよそ4,790のトランシェの公表格付けを格下げ方向で「クレジット・ウォッチ」に指定することになろう。
格付け規準更新の要点
最も重要な更新点は、ポートフォリオ分析に用いるデフォルトのシミュレーションを補完するために、定性的、定量的、両面のテストを追加したことである。これら「補完テスト」の実施目的は、イベントリスクとモデルリスクの両方に対処することである。
加えて、各格付け水準においてCDOトランシェがパスすべきであるとスタンダード&プアーズが考える「目標ポートフォリオ・デフォルト率」を達成するために、CDOエバリュエーターのシミュレーション・モデルの再計測を実施した。更新した格付け規準では、資産デフォルト率、相関、回収などその他のパラメータを調整し、モデルが導出する資産ポートフォリオのデフォルトと損失の結果がスタンダード&プアーズの格付け定義に相当する水準になるようにした(2009年8月4日発行のリポート「格付け規準:スタンダード&プアーズの格付けの定義を理解する」を参照)。
また、CDOエバリュエーターで採用しているモンテカルロ法のデフォルト・シミュレーションから完全に切り離した、定性的・定量的要素を分析に追加導入することで、シミュレーション・モデルのみを使用した場合に比べて、分析の健全化が図れるだろう。CDOエバリュエーターにおいて特定の目標ポートフォリオ・デフォルト率を達成することで、投資家にとって、スタンダード&プアーズの格付けと分析手法を理解することや、格付けとその手法を自らの投資目的と関連付けることがより容易になり、透明性の向上につながると考える。
もう1つの重要な更新点として、コーポレートCDO案件の評価に、シナリオ分析が含まれるようになったことがある。シナリオ・テストでは、相関、回収、スプレッド、デフォルト・バイアスの4つの重要なポートフォリオ・パラメータの変更が、CDOのトランシェの格付けに及ぼす影響を分析する。格付け規準にこのような側面を加えたのは、信用力の安定性の観点に対応することを意図している。
今回の格付け規準の更新点は、以下のとおりである。
- 特定のストレス・テスト、集中度の上限、最低限のエクイティ水準など、定量・定性テストを追加導入した。
- 大恐慌のように、マクロ経済状況に極度のストレスがかかった状態と同等と考えられる水準が「トリプルA」の目標ポートフォリオ・デフォルト率となるように、CDOエバリュエーターのデフォルト・モデルを再計測した。
- スタンダード&プアーズのクレジットプロのデータベース(既存の格付けとその履歴を追跡するデータベース)に記録された、過去28年間に発生した実際のコーポレート・デフォルトの最大値と同水準が「トリプルB」の目標ポートフォリオ・デフォルト率となるように、CDOエバリュエーター・モデルを再計測した。
- シンセティックCDOに対して、格付け水準ごとに階層化した回収率を導入した。
- CDOトランシェについて、予測されるストレス水準に基づき、推定される回収率の水準を引き下げ、各格付けに見合う水準とした。
- デフォルト発生の開始時点やトランシェのブレークイーブン・デフォルト率分析など、キャッシュフローのストレス・パラメータを一部、更新した。
- 信用力の安定性をCDO分析に織り込んだ。
- モデルのパラメータに対する感応度をCDO分析で検討することとした。
更新された格付け規準は、企業債務(ローンおよび債券)に裏付けられたキャッシュフローCDOと企業銘柄を参照ポートフォリオとするシンセティックCDOに対して、即時適用される。また、現物とシンセティック形式が混在する企業銘柄に裏付けられているCDO案件に対しても、この格付け規準が適用される。加えて、コーポレートCDOのCDO(CDOスクエアード)、ハイブリッド・トラスト・プリファードCDOにも関連する。
またスタンダード&プアーズは同時に、本格付け規準変更に関連して、「クレジットFAQ(よくある質問)」リポートと「補完テスト」の適用事例に関するリポートを発表した(9月17日発行の英文リポート「Credit FAQ: Standard & Poor's Explains Updates To Global Corporate Cash Flow And Synthetic CDOs Criteria」、「Application Of Supplemental Tests For Rating Global Corporate Cash Flow And Synthetic CDOs」を参照のこと)。
格付け規準更新が既存の格付けに及ぼす影響
今回の格付け規準更新に伴い、全世界でコーポレートCDO案件のおよそ4,790トランシェの公表格付けを、格下げ方向で「クレジット・ウォッチ」に指定する必要がある。対象となるトランシェの発行総額は約5,780億ドルとなる。ただし、償還日までの期間が短いトランシェで、その信用補完の評価に基づき、格付け規準更新の影響を受ける可能性が低いと考えられるものは、今回、格下げ方向での「クレジット・ウォッチ」指定の対象とはならない。
予備段階での概算では、格下げ幅は、既存のシンセティックCDOで平均4ノッチ(段階)になると考えられる。スーパー・シニア・トランシェの「トリプルA」格付けに対する影響度は少なく、平均格下げ幅は2-3ノッチとみられる。シンセティックCDOの「トリプルA」格付けのトランシェへの影響度は大きく、格下げ幅は平均で4-5ノッチとなろう。
既存のキャッシュフローCDOの格下げ幅は平均で3ノッチになると予想される。下位クラスの「トリプルA」トランシェの上位に位置する最上位クラスの「トリプルA」格付けのキャッシュフローCDOのトランシェに対する影響度は少なく、平均格下げ幅は1-2ノッチとみられる。
今後数カ月間に、格付け規準更新の影響を受けるトランシェの格付け見直しを開始し、適切な水準に変更する予定である。今回の格付け規準の更新に伴う格付け変更の大半は、コーポレートCDOのベース・ケースにおいて予想されるパフォーマンスが変更されることによるものではない。今後のCDOのトランシェの格付け変更は、格付けの定義に見合ったストレスシナリオに耐える能力に対するスタンダード&プアーズの評価が変わったことを反映するものとなる。
日本のシンセティックCDO案件の格付けへの影響の詳細については、9月18日付のプレス・リリース「日本のシンセティックCDO 26トランシェを『クレジット・ウォッチ』に--格付け規準の更新を受けて、格下げ方向で指定」を参照願いたい。
<関連リポート>
「Update To Global Methodologies And Assumptions For Corporate Cash Flow And Synthetic CDOs」
(英語版のみ、2009年9月17日発行)
「Credit FAQ: Standard & Poor's Explains Updates To Global Corporate Cash Flow And Synthetic CDOs Criteria」
(英語版のみ、2009年9月17日発行)
「Application Of Supplemental Tests For Rating Global Corporate Cash Flow And Synthetic CDOs」
(英語版のみ、2009年9月17日発行)
「Understanding Standard & Poor's Rating Definitions」 (2009年6月3日発行)
(日本語版は2009年8月4日発行の「格付け規準:スタンダード&プアーズの格付けの定義を理解する」)
*本プレス・リリースは、2009年9月17日にニューヨークから発信された英語プレス・リリース「S&P Updates Global Corporate CDO Criteria」の翻訳です。
*過去に発表したリポートはS&Pの以下の情報サービス商品(年間契約制)に掲載されています。格付け規準リポートはS&Pの日英ウェブサイトにも掲載されています(日本語ウェブサイトは日本語版があるもののみ)。情報商品の詳細、または個別リポートのご購入については、営業・クライアントサービス(電話03-4550-8711、clientservices_japan@standardandpoors.com)まで。
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